投資を始める前に考えたい生活防衛資金|6か月分の目安と早見表

資産形成

お金を「守る」から始める理由

資産形成というと、投資信託や新NISAなど「増やす方法」に目が向きがちです。ただ、投資の前に整えておきたい順番があります。

私は、①家計を把握する、②生活防衛資金を確保する、③余剰資金で投資する、という3つのステップで考えています。生活防衛資金が貯まっていない段階で投資に回すお金を増やすと、急な出費のときに投資商品を取り崩すことになりかねません。投資は、なくなっても当面の生活に困らない「余剰資金」で行うのが基本です。

最初のステップである家計の管理は、毎月の収入と支出を家計簿アプリなどで把握し、生活費の実額を明らかにすることから始まります。ここが曖昧なままだと、次のステップで必要になる生活防衛資金の目安額も正しく計算できません。

生活防衛資金は生活費の6か月分を目安に

生活防衛資金の目安は「生活費の3か月分から6か月分」とよく言われますが、私は6か月分を基準にすることをおすすめします。

根拠は、リストラなどで収入が途絶えてから、次の給料が振り込まれるまでにかかる期間です。厚生労働省の転職者実態調査によると、転職活動にかかる期間は平均で3か月程度とされ、6か月未満で転職を終える人が全体の6割を超えています。ただし、これは平均的な傾向であり、年齢や職種によって長引くこともあります。転職先が決まってから初回の給与が振り込まれるまでにも、1〜2か月かかるのが一般的です。

これらを踏まえ、本記事では基準を6か月分としつつ、より長引いた場合にも備えたい方向けに、余裕を持たせた1年分の金額も併せて算出しています。本記事執筆時点の公的調査に基づく一般的な傾向のため、最新の状況は公的機関の公式情報でご確認ください。

生活防衛資金の置き場所

生活防衛資金はいくら必要か【早見表】

表の「生活費の目安」は、手取りが低い世帯ほど比率が高くなるよう、手取りの90%(高め)〜65%(低め)で傾斜をかけて試算した、実際の生活費に近い金額です。「6か月分」「1年分」はこの生活費の目安をもとに計算した生活防衛資金の目標額、「貯蓄額」は手取りから生活費の目安を差し引いた毎月の貯蓄ペースです。いずれも説明用の一例です。

No 働き方 世帯年収 世帯の
手取り(月)
生活費の目安 貯蓄額(月) 6か月分 1年分
1 片働き 350万円 23万円 20.7万円
(90%)
2.3万円 124万円
(54か月)
249万円
(108か月)
2 片働き 550万円 35万円 29.6万円
(85%)
5.2万円 178万円
(34か月)
355万円
(68か月)
3 片働き 700万円 43万円 32.4万円
(75%)
10.8万円 194万円
(18か月)
389万円
(36か月)
4 共働き
(300万+250万)
550万円 37万円 29.7万円
(80%)
7.4万円 76万円
(10か月)
151万円
(20か月)
5 共働き
(400万+300万)
700万円 46万円 32.2万円
(70%)
13.8万円 73万円
(5か月)
146万円
(11か月)
6 共働き
(500万+400万)
900万円 58万円 37.5万円
(65%)
20.2万円 69万円
(3か月)
138万円
(7か月)

括弧内の「○か月」は、貯蓄額をすべて生活防衛資金に回した場合に目標額まで貯まる期間です。共働きの場合、片方が離職してももう一方の収入は続くため、表の共働きパターンでは目標額を「生活費の目安−残る側(収入が少ない方)の手取り」の不足分で計算しています。世帯の手取りは、年収額から一般的な手取り率の目安(年収帯によりおよそ74〜82%程度)で逆算した概算です。実際の手取り率は家族構成や社会保険料率などで変わるため、あくまで目安としてご覧ください。

生活防衛資金の算出方法

自分の場合の金額を出すときは、次の手順で計算する方法をおすすめします。

  1. 生活費の目安を確認する(表を参考にするか、実際の生活費を家計簿などで把握する)
  2. 片働きなら「生活費の目安×6か月」、共働きなら「(生活費の目安−残る側の手取り)×6か月」で目標額を計算する
  3. 貯蓄額=手取り−生活費の目安で、毎月の貯蓄ペースを出す
  4. 目標額÷毎月の貯蓄額で、貯まるまでのおおよその期間がわかる

たとえば片働きで年収550万円(手取り35万円)の場合、生活費の目安は29.6万円(85%)、目標額は29.6万円×6か月=178万円です。貯蓄額は35万円−29.6万円=5.2万円/月なので、178万円÷5.2万円=34か月が到達までの目安です。表と金額が違う方は、自分の生活費で計算し直すとより実態に近くなります。

生活防衛資金が貯まるまでの投資との両立

表の「○か月」を見ると、片働き・年収350万円(手取り23万円)のケースでは目標額到達まで54か月(4年半)程度かかります。この間、投資額を完全にゼロにすると、その分の運用機会を逃すことにもなりかねません。

そこでおすすめしたいのが、最初のステップに立ち戻り、家計の管理を見直すことです。生活費を低く抑えられれば、①生活費をもとに計算する目標額そのものが小さくなり、②手取りから生活費を差し引く貯蓄額も増えるという2つの効果が同時に働き、目標額に到達するまでの期間を大きく縮められます。定期的に家計を見直すことをおすすめしているのは、この理由からです。

あわせて、貯蓄額の大部分(たとえば8〜9割)を生活防衛資金に、残りを少額の積立投資に回すという配分にすると、生活防衛資金づくりを優先しながら機会損失も抑えやすくなります。生活防衛資金が目標額に達したら、投資に回す割合を増やしていきましょう。

生活防衛資金を貯め続ける

生活防衛資金の見直しのタイミング

生活防衛資金は一度貯めたら終わりではありません。結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立など、家族構成や収入が変わったときは見直しの機会です。何も変化がなくても、年に1回程度、次の点を確認するとよいでしょう。

  • 毎月の生活費は増えていないか
  • 生活防衛資金は何か月分あるか
  • 投資に回しすぎて手元資金が薄くなっていないか
  • 共働きから片働きに変わるなど、世帯の収入構成に変化はないか

共働きから片働きになった場合、表の共働きパターンで計算していた金額では不足するため、片働き向けの計算方法に切り替えて金額を出し直す必要があります。

まとめ

資産形成は、①家計の管理、②生活防衛資金の確保、③余剰資金での投資、という順番で考えると進めやすくなります。生活防衛資金は、転職活動から次の給料が入るまでの期間を踏まえ、生活費の6か月分を目安にするのがおすすめです。目標額まで時間がかかる場合も、投資をゼロにせず、家計の管理を見直しながら生活防衛資金を優先し、少額の積立を並行するとよいでしょう。

本記事は執筆時点の一般的な考え方をまとめたものです。統計や制度は変わることがあるため、最新情報は公的機関の公式情報でご確認ください。

FAQ

Q. 生活防衛資金が貯まるまで投資は始めないほうがよいですか?

A. 生活費がほとんど手元にない状態なら、生活防衛資金づくりを優先したほうが安心です。ただし目標額まで何年もかかる場合は、貯蓄額の大部分を生活防衛資金に、残りを少額の積立投資に回すなど、両立させる方法もあります。

Q. 共働きでも生活防衛資金は必要ですか?

A. 必要です。片方の収入が止まっても家計への打撃を抑えられるよう、「生活費の目安−残る側の手取り」を目安に準備すると安心です。扶養家族が多い、勤務先の業種に偏りがあるなど同時収入減のリスクが高い家庭では、片働きに近い金額まで積み増すと安心感が高まります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました