副業の経費は、「あとでまとめて計算しよう」と思うほど面倒になります。しかも、経費を記録すると実際にいくら税負担が軽くなるのか分からなければ、領収書を整理する気にもなりません。
この記事では、経費になる可能性がある支出と、節税額のイメージを具体的な金額で示します。基本式は次のとおりです。
副業収入 − 必要経費 = 副業所得
税金の計算対象になるのは、収入そのものではなく、経費を差し引いた所得です。以下の試算は仕組みを理解するためのモデルケースであり、実際の税額を保証するものではありません。
経費で得する金額は「経費×税率」のイメージ
経費を10万円計上したからといって、10万円が戻ってくるわけではありません。所得税と住民税を合わせた税率を仮に20%とすると、税負担が軽くなる目安は次のようになります。
経費10万円 × 仮定税率20% = 税負担の軽減額2万円
不要なものを10万円で買って2万円節税しても、手元のお金は差し引き8万円減ります。節税目的で支出を増やすのではなく、すでに必要だった支出を漏れなく記録することが大切です。
年収と所得税・住民税の目安
所得税は課税所得(給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除などを差し引いた金額)に応じた累進課税で、住民税はおおむね一律10%です。独身・扶養なしの会社員が、社会保険料控除を年収のおよそ14%、基礎控除48万円として概算すると、年収と合計税率の対応はおおむね次のようになります。
| 年収の目安 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 〜400万円程度 | 5% | 10% | 15% |
| 450万円台〜600万円程度 | 10% | 10% | 20% |
| 650万円台〜1,000万円程度 | 20% | 10% | 30% |
| 1,100万円台〜1,200万円台 | 23% | 10% | 33% |
| 1,300万円台〜2,100万円程度 | 33% | 10% | 43% |
| 2,200万円程度〜4,200万円程度 | 40% | 10% | 50% |
| 4,300万円程度〜 | 45% | 10% | 55% |
この表は、扶養や社会保険料率、控除の適用状況によって変わる大まかな目安です。特に高年収帯は社会保険料の上限や基礎控除の逓減で誤差が広がります。正確な税率・税額は源泉徴収票や確定申告ソフトの試算機能、税務署などで確認してください。

① Webライティング・ブログ系
パソコンとネット環境があれば始めやすく、在庫を持たない一方、ツール代や通信費などの少額支出を見落としがちです。
- 副業専用の周辺機器代(キーボード・マウス・モニターなど)
- 文章作成・画像編集・オンライン会議などの有料ツール利用料
- ブログのサーバー代、ドメイン代
- 記事作成に直接必要な書籍、資料代
- 取材や打ち合わせの交通費
- 通信費・スマートフォン料金の副業使用分
② せどり・ネット販売系
仕入代に加えて手数料や送料も積み上がるため、特に経費管理が重要です。年末時点で売れ残った在庫は、購入代金をそのまま経費にできない点にも注意しましょう。
- 販売した商品の仕入代
- 梱包資材代(段ボール・緩衝材・テープなど)、送料
- 販売プラットフォームの販売手数料、決済手数料
- 仕入れ・発送に必要な交通費
- 商品撮影用の照明や背景紙、在庫管理ツール利用料
③ スキル販売・オンライン講師系
仕入れは少ないものの、ソフト代や機材費、販売手数料が主な経費になります。将来のための一般的な勉強や私生活にも役立つ講座は、副業との関係が曖昧になりやすいため注意が必要です。
- デザイン・動画編集・資料作成などのソフト利用料
- マイク、Webカメラ、照明、ペンタブレットなどの機材代
- スキル販売サイトの手数料、教材作成費
- 現在提供しているサービスに直接関係する書籍・講座代
- 打ち合わせの交通費、通信費・電気代の副業使用分
副業収入・経費・税率別の節税額早見表
節税額はジャンルではなく「副業収入」「必要経費」「税率」の3つで決まります。副業収入3パターン(月5万・10万・30万円)×経費2パターン(収入の10%=少なめ、40%=多め)×仮定税率2パターン(15%・30%)で一覧にしました。
| 副業収入 | 必要経費 | 副業所得 | 仮定税率 | 節税額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 月5万円(年60万円) | 少なめ 6万円 | 54万円 | 15% | 9,000円 |
| 少なめ 6万円 | 54万円 | 30% | 1万8,000円 | |
| 多め 24万円 | 36万円 | 15% | 3万6,000円 | |
| 多め 24万円 | 36万円 | 30% | 7万2,000円 | |
| 月10万円(年120万円) | 少なめ 12万円 | 108万円 | 15% | 1万8,000円 |
| 少なめ 12万円 | 108万円 | 30% | 3万6,000円 | |
| 多め 48万円 | 72万円 | 15% | 7万2,000円 | |
| 多め 48万円 | 72万円 | 30% | 14万4,000円 | |
| 月30万円(年360万円) | 少なめ 36万円 | 324万円 | 15% | 5万4,000円 |
| 少なめ 36万円 | 324万円 | 30% | 10万8,000円 | |
| 多め 144万円 | 216万円 | 15% | 21万6,000円 | |
| 多め 144万円 | 216万円 | 30% | 43万2,000円 |
ご自身の副業収入に近い行を見つけ、実際の経費をあてはめて概算してみてください。税率は前の章の年収の目安表を参考に選ぶとイメージしやすくなります。
節税より大切なのは「黒字化」
副業の赤字は、原則として本業の給与所得と損益通算(相殺)できません。赤字を出しても本業の税金が安くなるわけではないため、節税だけを目的に経費を積み増しても、赤字が続けば手元のお金はむしろ減ります。
副業の本来の目的は、売上を伸ばして黒字化し、経済的な余裕を積み上げていくことです。経費管理は黒字化を正確に把握し、無駄な税負担を防ぐための手段にすぎません。まずは赤字を出さない水準まで売上を伸ばすことを優先し、そのうえで経費の記録と節税を仕組み化するのが現実的な順番です。

経費計算を続けるための3ステップ
- 副業の入出金に使う口座や決済手段をできる範囲で分ける
- 領収書や利用明細に「記事資料」「商品発送」など用途をメモする
- 月に一度、日付、支払先、内容、金額を一覧にする
高額なパソコンや機材は、購入年に全額を経費にせず複数年に分けて計上する場合があります。判断が難しいものは、公的機関の案内や専門家へ確認しましょう。
なお、雑所得の赤字は原則として給与所得と相殺できず、所得税の確定申告が不要な場合でも住民税の申告が必要になることがあります。所得区分は活動の規模、継続性、帳簿などの実態から判断されます。
FAQ
Q. 通信費や家賃は全額経費にできますか?
私生活でも使っている場合は、副業に使用した部分だけを合理的に按分します。通信費なら使用時間、自宅家賃なら作業スペースの面積など、実態に合う基準の根拠を残してください。
Q. 経費を増やすほど得になりますか?
いいえ。経費は実際に支払ったお金なので、税負担が軽くなっても支出額以上に得することはありません。必要な支出を漏れなく計上し、不要な買い物はしないのが基本です。
まとめ
- 節税額の目安は「必要経費×自分に適用される税率」で決まる
- 経費にできるのは、副業収入との関係を説明できる支出のみ
- 副業の赤字は本業と相殺できないため、まずは黒字化を優先する
- 節税は黒字を守る手段であり、副業の目的は売上拡大による黒字化そのもの
まずは今月のツール代、手数料、送料などを一覧にして、副業で本当に残った金額を確認してみましょう。そのうえで売上を伸ばし、黒字を積み上げていくことが、経済的な豊かさへの近道です。本記事の試算はすべてモデルケースです。申告時は公的機関の最新情報を確認し、判断が難しい場合は税務署や税理士へ相談してください。



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