資産形成を始めると商品選びに目が向きがちですが、長く運用するなら、株式・債券・現金をどの割合で持つかも重要です。資産配分は年齢だけでなく、お金を使う時期、家計の余裕、値下がりへの耐性を踏まえて決めます。子育て中は教育費や住宅費など、目的ごとに分けると整理しやすくなります。
資産配分(アセットアロケーション)とは
資産配分とは、金融資産を株式、債券、現金などに振り分け、「増やす部分」「値動きを抑える部分」「近いうちに使う部分」と役割を持たせることです。先に配分を決めてから商品を選ぶと、話題の商品への場当たり的な投資を防げます。投資のリスクは価格や収益の振れ幅を指すため、期待リターンだけでなく、下落中も保有を続けられるかを考えましょう。

株式・債券・現金には異なる役割がある
資産配分の基本となる株式・債券・現金には、それぞれ異なる強み・弱み・特徴があります。なお、本記事で「債券」というときは、日本国内の債券に限らず、外国の国債・社債も含めた資産クラス全体を指しています。
| 資産 | 強み | 弱み | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式 | 長期的な成長・配当を期待できる | 短期間で大きく値下がりすることがある | 企業の成長に連動。国・地域・業種の分散が必要 |
| 債券 | 株式より値動きが小さく、資産全体の振れを和らげる | 金利上昇で価格が下落し、発行体の信用リスクもある | 国や企業への貸付。外国債券は為替の影響も受ける |
| 現金 | 生活費や急な出費にすぐ使え、元本が変動しない | 物価上昇で実質的な価値が目減りする | 生活防衛資金や近い将来の支出に向く。増える力は弱い |
株式は近い将来に使うお金には慎重に利用し、国や地域、業種も分散させましょう。現金は増えにくくても、投資資産を悪い時期に売らずに済む土台になります。株式や債券を実際に保有する方法としては、投資信託だけでなくETFという選択肢もあります。投資信託とETFの使い分けもあわせて確認してください。
資産配分を決める基準はリスク許容度
リスク許容度とは、どの程度の値下がりや収益の変動を受け入れられるかという度合いです。家計面と心理面の両方から確認します。
家計としてどこまで損失に耐えられるか
- 毎月の収入と支出に余裕があるか
- 緊急資金を確保できているか
- 教育費や住宅購入など大きな支出が近くないか
- 運用するお金を使うまで何年あるか
- 収入の安定性や家族を扶養する負担はどうか
- 借入金の返済が家計を圧迫していないか
余裕資金なら回復を待ちやすい一方、生活に必要な資金や使用時期が決まったお金は、増やすことより守ることを優先します。
気持ちとして値下がりに耐えられるか
値下がりへの不安から積み立てをやめたり慌てて売ったりするなら、リスクを取りすぎています。『サイコロジー・オブ・マネー』が示すように、お金の判断は数学だけでなく心理や環境にも左右されます。私が大切にするのは「破滅的なリスクは取らないが、適切なリスクは取る」という考え方です。相場が悪くても仕事や子育てへ集中できる配分を選びます。
資産配分をいつから意識すべきか
資産形成の初期から必要な考え方ですが、金融資産が1,000万円前後になった頃も見直しの目安とされています(資産運用のコラム記事などで紹介される目安)。米国株式市場の過去約100年のデータでは、20%以上の下落は複数回起きており、平均すると10年前後に1度程度のペースだったとされています(myINDEX「投資のデータ集:過去97年の市場暴落と回復年数」)。その損失を「労働で埋め合わせられる感覚」が薄れたら、現金や国債などへ配分を広げる時期と考えられます。ただし、リスク許容度は資産額だけで決まるものではなく、収入、性格、経験、家族の状況によって人それぞれ大きく異なります。1,000万円は決まりではなく、自分が値下がりをどう感じるかも基準にしましょう。

年代別に見る6つの資産配分パターン
資産配分を考えるときの目安として、年代別の考え方を知っておくと判断しやすくなります。先ほど触れた「1,000万円」という目安をもとに、資産1,000万円を保有していると仮定し、30歳・50歳・70歳のそれぞれについて、株式の割合を多めにする「積極型」、少なめにする「慎重型」の2パターンずつ、計6パターンで試算してみます。
前提条件は次のとおりです。
- 現在の資産は1,000万円とする
- 生活防衛資金として最低150万円(15%)は現金で確保し、株式:(債券+現金)の割合で残りを配分する
- 想定年利は株式5%・債券1%・現金0%とし、複利で20年間運用した場合の資産額を試算する
- これらの利回りは説明用の設定であり、実際の運用成果を保証するものではない
| 年代・型 | 株式 | 債券 | 現金 | 想定 年利 |
20年後の 予想資産 |
株価30%下落時の マイナス評価額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 30歳 積極型 |
80% | 5% | 15% | 4.05% | 約2,212万円 | 240万円 |
| 30歳 慎重型 |
55% | 30% | 15% | 3.05% | 約1,824万円 | 165万円 |
| 50歳 積極型 |
65% | 20% | 15% | 3.45% | 約1,971万円 | 195万円 |
| 50歳 慎重型 |
40% | 40% | 20% | 2.40% | 約1,607万円 | 120万円 |
| 70歳 積極型 |
40% | 30% | 30% | 2.30% | 約1,576万円 | 120万円 |
| 70歳 慎重型 |
20% | 30% | 50% | 1.30% | 約1,295万円 | 60万円 |
※「株価30%下落時のマイナス評価額」は、20年後の予想資産に対してではなく、現在の1,000万円のうち株式部分が30%下落した場合の目減り額です。
年代が上がるほど、積極型・慎重型のいずれも株式の割合を抑えており、20年後の予想資産は伸びにくくなる一方、株価30%下落時のマイナス評価額も小さくなります。若いうちは、株式が下落しても回復を待てる期間が長く、給与収入を得られる期間も長いため、含み損が出ても働いて埋め合わせやすく、リスクを多めに取りやすいというのが基本的な考え方です。反対に年齢が上がるほど運用期間が短くなり、労働による埋め合わせも利きにくくなるため、株式の割合を抑える方向になります。
70歳になると、すでに働いていない人がほとんどで、年金収入もあるため、資産運用でリスクを取る必要性自体は下がります。その一方で、想定より長生きし、資産が先に底をついてしまう「長生きリスク」もあります。年金だけでは心もとない場合、ある程度の株式を保有し続けることが、長生きリスクへの備えにもなります。ただし、保有する資産の種類を増やしすぎると、相続の際に手続きが複雑になりやすいため、高齢期はリスク資産を残しつつも、資産全体をできるだけシンプルに保つという視点も大切です。今回の表で70歳でも株式を0%にしていないのは、こうした背景を踏まえたものです。
生活防衛資金として現金を最低150万円は確保したうえで、残りを株式と債券にどう振り分けるかが、資産配分の分かれ目になっていることが分かります。ただし、70歳で20年後まで運用を続けるかどうかは人によって前提が異なりますし、収入の安定性、緊急資金、今後の支出、借入金の状況も家庭ごとに違います。表はあくまで比較のためのモデルとして参考にし、実際の配分は家計の事情と値下がりへの心理的な許容度に合わせて調整してください。
会社員が資産配分を考える5つの手順
- 生活費、緊急資金、近い将来に使うお金を投資資金から分けます。
- 老後資金や教育資金など、目的と使い始める時期を決めます。
- 許容できる値下がりを、家計面と心理面から考えます。
- 株式・債券・現金の役割を決め、続けられる配分を選びます。
- 定期的に点検し、必要な場合だけ当初の方針へ戻します。
私はオルカン(全世界株式)の投資信託を毎月10万円積み立てています。iDeCoではなくNISAを選んだのは、必要時に売却できる柔軟性を重視したためです。これは私個人の選択であり、目的や使用時期に応じて判断する必要があります。
資産配分を維持するリバランス
運用中に値上がりした資産の割合が増えたら、当初の配分へ近づけるリバランスを行います。売却だけでなく、新しい積立資金を不足している資産へ振り向ける方法もあります。
相場が動くたびに変えず、年に一度など決めた時期や、結婚、転職、住宅購入、資金を使う時期が近づいたときに確認しましょう。
資産配分で避けたい3つの失敗
- 最近値上がりした資産を追いかけ、配分を頻繁に変える
- 緊急資金まで投資し、下落時に売らざるを得なくなる
- 商品を複数持っただけで、分散できたと思い込む
商品数が多くても、同じ国や同じ種類の株式に集中していれば十分な分散とはいえません。投資先の資産、地域、通貨を確認しましょう。なお、分散投資も値下がりを完全に防ぐものではありません。
まとめ
資産配分では、株式・債券・現金に役割を持たせ、使う時期から逆算します。正解の比率を探すより、家計と心理の両面で無理なく続けられる組み合わせを選びましょう。
本記事は一般的な考え方の説明であり、特定の商品や配分を推奨するものではありません。リスク、手数料、税制などの最新情報を確認し、ご自身の判断と責任で投資してください。
資産配分に関するFAQ
Q1. 年齢だけで株式と債券の割合を決めてもよいですか?
年齢だけでは決められません。目的、使う時期、収入、家族構成、保有資産、値下がりへの心理的な許容度も確認しましょう。
Q2. 積立投資をしていれば資産配分は考えなくてもよいですか?
積立投資は購入時期を分ける方法で、資産の種類を分ける資産配分とは役割が異なります。積立中も、何をどれだけ保有しているか定期的に確認しましょう。



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