年末調整とは?確定申告との違い・必要書類・会社員が準備することをやさしく解説

制度・税金

会社から年末調整の案内が届くと、申告書の名前や確認項目の多さに身構えてしまうかもしれません。ただ、目的は「給与から天引きされた所得税を正しい金額に合わせること」です。この記事では年末調整の仕組みと、実際にどれくらい税額が変わるかをモデルケースで確認します。年末調整では対応できず、確定申告が必要になるケースもあわせて見ていきましょう。

※本記事は執筆時点の国税庁の一般的な情報に基づく説明です。税制は改正されることがあるため、実際の手続きや適用条件は勤務先の案内や国税庁の最新情報でご確認ください。

計算機と書類が置かれたデスク、年末調整の書類整理のイメージ

年末調整とは所得税の過不足を精算する手続き

会社員の給与からは毎月、所得税が天引きされています(源泉徴収)。ただし毎月差し引かれる税額はその時点の給与や扶養人数などをもとにした概算で、1年間に本来納めるべき所得税と必ず一致するわけではありません。年末に勤務先が、扶養状況・生命保険料・iDeCo掛金・住宅ローン控除などの情報を反映して所得税を計算し直し、払いすぎていれば還付、不足していれば追加徴収されます。給与天引きや累進課税の仕組みは所得税の仕組みとは?で解説しています。

年末調整で税金はどのくらい変わる?

年収500万円の会社員を例に試算しました(社会保険料控除は給与収入の14.5%と概算した説明用の仮定です)。

シナリオ 課税所得 所得税額
① 控除なし 235.5万円 13.80万円
② 生保4万+iDeCo14.4万を申告 217.1万円 11.96万円 -1.84万円
③ ②+住宅ローン控除21万円 217.1万円 0円 -11.96万円

②の生命保険料控除・iDeCo控除だけで、所得税・住民税あわせて年間約3.7万円の差になります。③は、借入残高3,000万円(控除率0.7%)の住宅ローンを想定し、年21万円の住宅ローン控除を適用したケースです。住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除で、計算済みの所得税額から直接差し引くため、所得税が0円になり、引ききれない約9.04万円は上限の範囲内で翌年度の住民税から控除されます。住宅ローン控除は借入額や性能区分によって金額が大きく変わるため、詳しくは住宅ローン控除は性能でいくら変わる?で試算しています。控除の申告漏れは、思っている以上に数万円単位の差になります。

確定申告で申告する内容と変わる金額

年末調整では対応できない項目は確定申告が必要です。②(課税所得217.1万円)を基準に試算しました。

シナリオ 課税所得 所得税額
① 年末調整のみ 217.1万円 11.96万円
② 医療費控除10万円 207.1万円 10.96万円 -1.00万円
③ ふるさと納税(上限約5.6万円) 211.7万円 11.42万円 -0.54万円
④ 副業所得30万円を申告 247.1万円 14.96万円 +3.00万円
(住民税も別途+約3万円)

医療費控除は「支払った医療費-保険金等-10万円」(総所得金額等が200万円未満の場合は10万円ではなく総所得金額等の5%)が控除額です。ふるさと納税は自己負担2,000円を除く全額が所得税・住民税トータルで軽減される設計で、限度額は住民税所得割額と所得税率から概算できます(今回のケースでは約5.6万円が上限)。副業所得は必要経費差引後20万円を超えると確定申告が必要になり、「超えた分だけ」ではなく所得の全額が課税対象になる点に注意してください。今回の例では所得税+住民税あわせて年間約6万円の負担増になり、副業所得30万円のうち手元に残るのは約24万円という計算です。それでも副業収入があること自体で手元に残るお金は増えるため、税金を差し引いても収入源を持つ魅力は大きいと思います。

年末調整と確定申告の違い

年末調整は、本人が申告書に記入・証明書を提出し、税額計算や税務署への処理は基本的に勤務先が進める手続きです。多くの会社員はこれだけで所得税額が確定します。一方、確定申告は本人が1年間の所得と控除をまとめて税務署に申告する手続きで、給与以外の所得や年末調整では扱えない控除も申告できます。「年末調整をしたら確定申告は絶対に不要」ではなく、医療費控除・副業所得(20万円超)・ふるさと納税(ワンストップ特例未使用)・初めての住宅ローン控除などは、年末調整をしたうえで確定申告が必要になる代表例です。副業については副業の確定申告はいつ必要?で詳しく解説しています。

年末調整の対象になる人

勤務先に「扶養控除等申告書」を提出し、年末までその会社に勤務している会社員が対象です。扶養家族がいない人でも提出を求められるのが一般的です。年の途中で転職した人も、前職の源泉徴収票を今の勤務先に提出すれば、前職分とまとめて年末調整できることがあります。一方、給与収入が高額な人、年末時点で勤務先がない人、複数の勤務先から給与を受けている人などは、年末調整だけで完結しない場合があります。

会社員が準備する主な書類

  • 扶養控除等申告書:扶養家族の状況を伝える書類。扶養家族がいなくても提出するのが一般的
  • 基礎控除・配偶者控除等申告書:配偶者の所得見込みなどを記入(パート収入のある配偶者がいる場合は扶養の壁とは?もあわせて確認)
  • 保険料控除申告書:生命保険料・地震保険料など(生命保険料控除とは?参照)
  • 小規模企業共済等掛金控除の証明書:iDeCoのほか、企業型DCのマッチング拠出(自分で上乗せした掛金)も対象
  • 住宅ローン控除関係書類:初年度は確定申告、2年目以降は年末調整で手続き可能

控除証明書は秋ごろに届くことが多く、なくすと再発行に時間がかかります。前職の源泉徴収票とあわせて早めに準備しておきましょう。マイナンバーカードを使い、マイナポータル経由で控除証明書を電子データとして取得すれば、年末調整の申告書に自動入力できる保険会社も増えています。紙の書類を探す手間を減らしたい人は、勤務先が対応しているか確認してみるとよいと思います。

FAQ

Q1. 年末調整をすれば確定申告は不要ですか?

いいえ。医療費控除や、副業所得が20万円を超える場合などは確定申告が必要です。年末調整で何が反映され、何が反映されていないかを確認することが大切です。

Q2. 保険料控除証明書をなくしたら、控除は受けられませんか?

あきらめる必要はありません。保険会社に再発行を依頼できますが、時間がかかることがあるため、提出期限に間に合うよう早めに確認しましょう。

まとめ

  • 年末調整は、源泉徴収された所得税の過不足を年末に精算する手続き
  • 生命保険料控除・iDeCo控除・住宅ローン控除の申告漏れは数万円単位の差になる
  • 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ特例未使用)・副業所得(20万円超)は確定申告が必要
  • 控除証明書や前職の源泉徴収票は早めに準備しておく

年末調整は、基本的には毎月の源泉徴収で払い過ぎた所得税を返してもらう手続きだと捉えています。ただし、昇給や賞与増加で年の途中から収入が上がった年は、逆に不足(追加徴収)になりやすい点には注意が必要です。還付か不足かに一喜一憂するより、自分が使える控除を漏れなく申告し、無駄なく正しい金額を納税することが大切だと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました