病気やケガで仕事を休むと、給与が減り生活費が心配になります。収入は有給休暇→傷病手当金→(該当すれば)障害年金やGLTDという形で段階的に変わります。この記事では支給条件・金額・申請方法に加え、収入の推移や退職リスクまで会社員向けに整理します。
※本記事は執筆時点の一般的な制度の説明です。最新の内容は協会けんぽや加入している健康保険組合の公式情報でご確認ください。
まず結論: 傷病手当金では、標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月支給されます。今まさに療養中の方は、収入の仕組みを細かく理解する必要はありません。まずは治療に専念してください。GLTDや休職期間の詳しい情報は、体調が落ち着いてから、あるいは健康なうちに読んでおくものとして位置づけています。
傷病手当金とは休業中の収入を補う制度
傷病手当金は、健康保険の被保険者本人が業務外の病気やケガで働けず、給与を十分に受け取れないときに支給される給付です(被扶養者は対象外)。健康保険が担う他の保障と同じく、治療費ではなく生活費を支える制度で、業務中・通勤中のケガは労災保険の対象になるため、業務外かどうかが最初のポイントです。
休業中の収入はどう変わるか
収入は下図のように段階的に変化します。有給休暇を使い切ると傷病手当金(標準報酬日額の2/3)に切り替わり、通算1年6か月で終了します。それ以降は、障害厚生年金等の要件を満たす人だけが公的給付を受けられ、該当しなければ収入が大きく落ち込みます。

この落ち込みを上乗せで補う福利厚生の保険がGLTD(団体長期障害所得補償保険)です。ただしGLTDは全社共通の制度ではなく、導入企業は2010年4.5%→2018年10.5%(労政時報第3957号)、1,000人以上の企業でも18.0%にとどまります。会社が契約する団体保険のため個人では加入できず、まずは人事・総務担当に確認してみましょう。
| 制度・補償区分 | 給付率(目安) | 支給期間・対象期間 | 概要・特徴 |
|---|---|---|---|
| 有給休暇等(待期・免責期間) | 有給消化中は100% | 傷病手当金の待期3日間+会社やGLTDが定める免責期間 | 傷病手当金の待期3日間には有給休暇を充てるのが一般的です。GLTDには別途、保険ごとの免責期間があります。 |
| 健康保険 傷病手当金 | 約67%(標準報酬日額の2/3) | 支給開始から通算1年6か月 | 病気やケガで働けない間の生活費を補う公的給付です。 |
| 障害厚生年金等 | 等級・報酬による(定額+報酬比例) | 障害の状態が続く間(定期的な診断書提出による見直しあり) | 傷病手当金の終了後などに、障害等級(1〜3級)に該当した場合のみ支給される公的年金です。 |
| GLTD 会社補償部分(全員加入型) | 給与の10〜20%程度(企業の設計による) | 就業障害発生〜定年など、企業が設定した期間 | 会社が保険料を全額負担し、全従業員を対象に公的給付へ上乗せする部分です。 |
| GLTD 上乗せ補償部分(任意加入型) | 給与の10〜50%程度(加入口数による) | 就業障害発生〜定年など、企業が設定した期間 | 従業員が任意で自己負担して追加加入する部分で、会社補償部分と合わせ給与の8〜10割程度をカバーする設計もあります。 |
| 一部復職(回復所得) | 実際の勤務実績に応じた給与 | 復職後、フルタイム勤務に戻るまでの期間 | 時短勤務での復職時、フルタイムとの差額をGLTDが補うタイプもあります(条件は商品により異なります)。 |
障害年金は傷病手当金の終了後に単純に切り替わるわけではありません。法律上は障害厚生年金が優先され、その日額換算が傷病手当金より低い場合のみ差額が支給されます(健康保険法108条2項)。障害等級1・2級は障害基礎年金も上乗せされますが、3級は厚生年金のみです。
数値は目安で、条件は企業ごとに異なります。GLTDがない場合、終了後の収入は貯蓄や障害年金の該当有無に左右されるため早めの資金計画が重要です。任意加入型は入社時など特定のタイミング限定で、後から入ろうとすると告知や審査が必要になる点にも注意してください。
GLTDがなくても、生命保険会社の就業不能保険(免責60日程度、給付無制限)や損保会社の所得補償保険(免責7〜60日、給付最長2年)なら個人でも加入できます。ただし個人契約は割高になりやすいため、貯蓄で足りない部分だけピンポイントで検討するのがおすすめです。住宅ローンがある方は団信の就業不能保障の有無も確認しましょう。
支給条件は4つ
次の4つをすべて満たす必要があります。
| 支給条件 | 内容 | 確認する相手・資料 |
|---|---|---|
| 業務外の病気・ケガ | 仕事や通勤が原因ではない傷病を療養中 | 会社、医療機関 |
| 仕事に就けない | 療養のため従来の仕事ができない状態 | 医師の意見、実際の仕事内容 |
| 4日以上休んでいる | 連続3日間の待期を満たし、その後も休んでいる | 勤怠記録、休暇申請 |
| 十分な給与がない | 休業期間の給与がない、または傷病手当金より少ない | 給与明細、会社の証明 |
待期は連続3日間必要で、途中出勤すると数え直しになります。有給休暇や公休日も待期に充てられます。
支給額と支給期間
1日あたりの支給額は「支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2」で計算します(基本給を単純に30日で割るわけではありません)。支給期間は同一の傷病について支給開始日から通算1年6か月で、復職し支給されなかった期間は通算に含まれません。傷病手当金自体は非課税で、所得税・住民税はかかりません。
有給休暇・休職制度との違い
有給休暇中は給与が出るため、原則同時には受け取れません(待期には充当可)。休職制度は雇用を維持したまま休む会社側の制度で、傷病手当金とは別物です。休職中も社会保険料や住民税の支払いは続き、出産手当金や労災の休業補償給付とは併給調整の対象になる場合もあります。
退職後も、退職日まで継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に受給中(または受給できる状態)なら、残りの期間の継続給付を受けられる場合があります。退職日を決める前に会社と保険者へ相談してください。
欠勤が続くとどうなる?休職期間の上限と退職のリスク
有給休暇を使い切ったあとは、多くの場合「休職」扱いになります。休職は法律の制度ではなく会社が就業規則で任意に設けるもので、上限は会社ごとに大きく異なります。
| 企業規模 | 休職期間の上限(目安) |
|---|---|
| 大企業(1,000人以上) | 1年6か月超〜2年 |
| 中堅企業(300〜999人) | 1年超〜1年6か月 |
| 中小企業(100〜299人) | 6か月超〜1年 |
| 小規模企業(99人以下) | 6か月超〜1年(上限を定めていない企業も多い) |
(出所:ニューロリワーク調査)。約半数の企業は勤続年数に応じて上限を区分しており、勤続1〜3年未満は3か月、3〜5年未満は6か月、5〜10年未満は1年、10年以上は1年6か月程度が目安です。傷病手当金の支給期間(1年6か月)に合わせる企業も多くなっています。
休職期間が満了しても復職できない場合、就業規則に基づき「自然退職」(自動的に退職扱い)となるのが一般的です。「会社に戻れるかどうか」も休職上限次第で変わるため、自分の勤務先の規定を体調を崩す前に確認しておくと安心です。
申請の流れ
- 会社へ休業を連絡し、申請書を入手する
- 本人記入欄(被保険者情報・振込先など)を記入する
- 会社に事業主記入欄を証明してもらう
- 医師に意見書を記入してもらう(文書料がかかる場合あり)
- 加入先の保険者(協会けんぽ等)へ提出する
本人・会社・医師の記入が必要なため、一人では完結しません。早めに依頼順を整理しておきましょう。
申請前のチェックポイント
- 病気やケガが業務外のものか、労災に該当しないか
- 連続3日間の待期が完成しているか、途中で出勤していないか
- 有給・欠勤・休職の扱いと給与の支給状況を会社に確認したか
- ほかに受けられる給付がないか、保険者に確認したか
- 自社の休職期間の上限と、満了時の扱いを就業規則で確認したか
よくある質問
Q1. うつ病などの精神疾患でも対象になりますか?
支給条件を満たせば対象になり得ます。病名だけでなく医師の意見や仕事内容で判断されます。
Q2. 退職後に初めて申請できますか?
在職中に条件を満たし、継続給付の条件も満たせば可能な場合があります。退職前に相談しましょう。
まとめ
傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない会社員の生活を支える制度です。支給額は標準報酬日額の3分の2、支給期間は通算1年6か月で、それ以降はGLTD(導入企業は1割程度)や障害年金の有無で収入が変わります。休職には会社ごとの上限があり、満了すると自然退職となるのが一般的です。休業や退職を決める前に、会社の休職規定と保険者へ早めに確認しましょう。治療費への備えは高額療養費制度があれば医療保険はいらない?月々の保険料と貯蓄額で比較もご覧ください。



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