社会保険料とは?会社が半分負担する仕組みと退職後に全額自己負担になる理由

制度・税金

こんにちは、かちょうです。給与明細を見て、「社会保険料でこんなに引かれているのか」と驚いたことはありませんか。この記事では、社会保険料の仕組み、会社が半分負担していること、退職後に全額自己負担になることを整理して解説します。

なお、本記事は執筆時点の一般的な制度・考え方の説明であり、最新の保険料率や制度内容は年金機構・協会けんぽなど公的機関の公式情報でご確認ください。

社会保険とは、お互いを支え合う仕組み

社会保険とは、病気・けが・老後・失業・介護に備えて、加入者みんなで保険料を出し合う公的な保険制度です。会社員は主に次の5つを負担します。

  • 健康保険:医療費負担を軽くする
  • 厚生年金保険:将来の年金、障害・死亡時の保障
  • 介護保険:40歳以降、介護サービスを支える
  • 雇用保険:失業・育児休業などの給付
  • 労災保険:仕事中・通勤中のけが・病気を補償

給与明細に載っている「社会保険料」は、この5つのうち健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上)を合計した金額です(雇用保険料は別項目で表示されることが多く、労災保険料は全額会社負担のため明細には出てきません)。これらは会社と従業員が原則50%ずつ負担する「労使折半」で、厚生年金保険料率18.3%のうち本人負担は半分の9.15%です。

社会保険料は「標準報酬月額」で決まります

健康保険料・厚生年金保険料は、その月の給与額そのものではなく、「標準報酬月額」という給与を一定の幅で丸めた金額をもとに計算されます。これは毎年4〜6月の給与額面の平均で決まり、その年の9月から1年間固定されるため、その期間に残業が多いと保険料が高くなります(「4〜6月は残業を控えると社会保険料が下がる」と言われる理由ですが、将来の年金額もその分下がります)。給与が大きく変わったときは「随時改定」で見直され、賞与からも別途差し引かれます。

試しに、基本給+固定手当が24万円(残業代を除く、賞与なしなら年収288万円ほど)の人が、4〜6月に残業した場合の影響を試算してみます(時給1,500円×割増1.25倍で計算。割増率は会社により異なります)。

4〜6月の
残業
3か月
平均額面
標準
報酬月額
年間の
社会保険料
残業なしとの
年間差額
なし 24.0万円 24万円 40.5万円 ±0円
毎月20時間
(残業代3.75万円)
27.8万円 28万円 47.3万円 +6.8万円
毎月40時間
(残業代7.5万円)
31.5万円 32万円 54.0万円 +13.5万円

2026年度・協会けんぽ東京支部、40歳未満(介護保険料を除く)の本人負担分での試算です。4〜6月だけ毎月40時間残業すると、その他の月は残業ゼロでも、1年間で13万円以上、社会保険料が余分にかかる計算になります。

手取りへの影響は2段階に分かれます。残業した4〜6月そのものは、社会保険料はまだ前年決定分のままなので変わらず、残業代がそのまま上乗せされます(所得税の源泉徴収はその月の額面が増える分だけ少し上がります)。一方、9月から翌年8月までの1年間は、4〜6月と関係なく毎月の社会保険料が上がるため、残業ゼロの月でも手取りが減り続けます(表の年間差額を12で割った額が、毎月の目安です)。

また、標準報酬月額が上がった分は、厚生年金の「報酬比例部分」の計算にも使われ、その1年分だけ将来の年金額に上乗せされます。毎月20時間のケースで年額+2,631円(月換算219円)、毎月40時間のケースで年額+5,262円(月換算438円)が生涯続きます。追加で払う社会保険料に対して、この年金の増加額はかなり小さく、20年受け取ってようやく元が取れるかどうかという水準です。ただし残業代そのもの(3か月分で11.3万円・22.5万円)は保険料の増加分より大きいため、「残業しないほうが得」とは言い切れません。むしろ大事なのは、同じ残業時間なら4〜6月に集中させず、他の月に分散させたほうが社会保険料は増えずに済む、という点です。

年収別、社会保険料・所得税・住民税の目安

独身・扶養なし・40歳未満・協会けんぽ東京支部を前提にした試算です。「社会保険料」は健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料をすべて合計した金額です。

年収 社会
保険料
所得税 住民税 合計 手取り 手取りに
対する割合
200万円 29.9万円 0.0万円 5.5万円 35.5万円 164.5万円 21.6%
400万円 59.9万円 5.7万円 17.6万円 83.2万円 316.8万円 26.3%
600万円 88.1万円 14.9万円 30.7万円 133.8万円 466.2万円 28.7%
800万円 116.5万円 43.4万円 45.3万円 205.2万円 594.8万円 34.5%
1000万円 126.6万円 82.2万円 63.8万円 272.6万円 727.4万円 37.5%
1200万円 136.6万円 124.4万円 82.8万円 343.8万円 856.2万円 40.2%
1400万円 147.9万円 178.4万円 101.7万円 428.0万円 972.0万円 44.0%
1600万円 159.8万円 241.8万円 120.5万円 522.1万円 1077.9万円 48.4%
1800万円 164.4万円 307.6万円 140.0万円 612.1万円 1187.9万円 51.5%
2000万円 165.4万円 374.7万円 159.9万円 700.0万円 1300.0万円 53.8%

年収別、手取りと税金・社会保険料の推移グラフ

手取り(青線)は年収にほぼ比例して伸びるのに対し、税金・社会保険料の合計(赤線)は年収が上がるほど傾きが急になります。年収2000万円では手取りに対する割合が53.8%、手取り100円につき54円近くを納めている計算です。この表は「独身・扶養なし・40歳未満」が前提で、40歳以上は介護保険料が加わり社会保険料は高くなり、扶養家族が増えると税負担は軽くなります。

社会保険料は年収が上がると頭打ちに近づきます

表の「社会保険料」(健康保険料+厚生年金保険料+介護保険料の合計)は、年収が上がるほど伸びが鈍っています。厚生年金保険料には「標準報酬月額の上限65万円/月」というキャップがあり、年収900万〜1000万円台で頭打ちになります。健康保険料と介護保険料の上限はさらに高く(いずれも139万円/月)、2000万円時点でもまだ緩やかに増え続けます。2026年度・協会けんぽ東京支部の料率で賞与を除く月給ベースだけで計算すると、本人負担の上限は厚生年金71.4万円+健康保険82.1万円+介護保険13.5万円で、合計およそ167万円/年です。年収2000万円時点の165.4万円という試算はこの理論上限にかなり近く、賞与を含めるともう少し上振れしますが、賞与にも上限があるため青天井には増えません。一方、所得税の最高税率45%はあくまで限界税率(追加で稼いだ1円に対する税率)の上限であり、稼ぐほど税額そのものは増え続けます。住民税も一律10%で累進課税ではないため、頭打ちの概念自体がありません。「所得税45%+住民税10%=55%」という数字もよく知られていますが、これは課税所得4,000万円超の部分に適用される限界税率の合計で、稼いだお金全体に対する負担割合の上限ではない点に注意が必要です。

社会保険料率(本人負担分)は、この20年余りで大きく上昇しました

厚生年金保険料率は2003年13.58%(本人6.79%)から段階的に引き上げられ、2017年9月に18.3%(本人9.15%)で固定。協会けんぽ健康保険料率(全国平均)は2003年8.2%から2012年10.00%まで上昇し、その後は10%前後で推移。介護保険料率も2000年度0.6%から2026年度1.62%まで上がりました。3つの本人負担分の合計は、2003年の約11.4%から2017年前後に約15%まで上昇し、ここ数年はほぼ横ばいです。

社会保険料率(本人負担分)の推移グラフ

上昇が急だったのは2003〜2017年で、その後は一服していますが、少子高齢化が続く限り今後さらに引き上げの議論が出てくる可能性はあります。増え続ける負担にどう向き合うかは、記事後半の「私たちにできること」で紹介します。

会社を辞めると、全額自己負担になる

在職中は会社が保険料の半分を負担してくれていますが、退職すると健康保険は次の2つから自分で選ぶことになります。

  • 任意継続被保険者制度:退職前に加入していた健康保険に最大2年間そのまま加入できる制度。ただし会社負担分がなくなるため、在職中のおよそ2倍の保険料が目安になります(上限あり)
  • 国民健康保険:前年の所得をもとに保険料が計算され、扶養という考え方がないため家族が多いほど負担が大きくなりやすい

年金も「国民年金」に切り替わり会社負担分がなくなります。転職・独立・早期退職を考えるときは、この変化も資金計画に含めておきましょう。

高齢化社会と社会保険料の関係

日本の公的年金は、現役世代の保険料をそのまま今の受給者へ充てる「賦課方式」です。少子高齢化が進むほど現役世代1人あたりの負担は重くなりやすく、2017年の保険料率固定と同時に、給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」も導入されました。この構造が変わらない限り、見直しの議論は今後も続くと思われます。

私たちにできること

「自分の家計を守る」ことと「制度そのものを支える」ことの両方が大切です。

家計を守る

制度を支える

社会保険はみんなで支え合う仕組みです。「必要な医療を我慢する」のではなく、無駄なく使う工夫もできます。

  • ジェネリック医薬品・リフィル処方箋を活用し、医療費を必要以上に増やさない
  • 40歳以上は特定健診を受け、生活習慣病を早期に防ぐ
  • 健康なうちは働き続け、年金の繰下げ受給も検討する

制度そのものを一人で変えることはできませんが、家計を守りながら、支え手であり続けることはできます。

まとめ

社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料を合計したもので、会社と折半で負担する仕組みになっています。退職すると、この会社負担分がなくなり、健康保険・年金ともに自己負担が重くなる点は意外と見落とされがちです。保険料率自体も、この20年余りで大きく上昇してきました。仕組みを理解したうえで、公的な保障と自分自身の備えのバランスを、それぞれの家計に合った形で考えていきましょう。

FAQ

Q1. 残業代が増えると社会保険料もすぐ上がりますか?

A. 必ずすぐ上がるとは限りません。標準報酬月額は一定期間の給与の変化をもとに見直されるため、一時的な残業増ではすぐに反映されないこともあります。

Q2. 退職後、任意継続と国民健康保険はどちらを選べばよいですか?

A. 世帯の状況によって変わります。任意継続は退職時の標準報酬月額で保険料が固定され、国民健康保険は前年所得や扶養人数で変わるため、両方の見積もりを比較してから選びましょう。

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