資産運用の出口戦略|積み立てたお金をいつ・どう取り崩すか

資産形成

資産運用は「増やした後」まで考えて完成する

こんにちは、かちょうです。NISAや投資信託の積立では「いくら増えるか」に目が向きがちですが、積み立てたお金は最後には生活や教育、老後のために使うものです。いつ、どの資産から、どう取り崩すか。これを資産運用の出口戦略といいます。

退職した日に投資を全部やめる必要はありません。当面必要な現金を確保しつつ、すぐ使わない資産の運用をどう続けるかまで含めた家計の設計が出口戦略です。私は生活防衛資金と投資資金を分け、投資に回したお金には極力手をつけないようにしています。生活防衛資金の考え方も参考にしてください。

出口戦略で最初に決めたいこと

まず退職後の収入と支出の差を確認し、毎月どれくらい運用資産で補う必要がありそうかをつかみます。次に、お金を「すぐ使う現金」「数年以内に使うお金」「しばらく使わないお金」に分けます。時期が近い支出ほど現金へ、まだ使わない分は値動きを抑えながら運用に残す、という考え方です。取り崩し方には、毎月一定額を売る「定額」、残高の一定割合を売る「定率」、必要なときだけ売る「必要時」の3種類がありますが、金額でイメージしやすい「定額」を軸に、以下のモデルケースで試算しました。資産の配分そのものを見直したい場合は、資産配分の決め方も参考にしてください。

モデルケースで試算する、65歳からの毎月の取り崩し額

取り崩しは「率」より「金額」で考えたほうがイメージしやすいと思うので、実額で試算しました。前提は、65歳時点の運用資産1000万円・3000万円・5000万円を、95歳(30年後)でちょうど尽きるように毎月定額で取り崩す設計です。成長率は4%・7%・10%の3パターンです。

65歳時点の
運用資産
成長率4% 成長率7% 成長率10%
1000万円 月4.7万円 月6.5万円 月8.5万円
3000万円 月14.2万円 月19.5万円 月25.4万円
5000万円 月23.7万円 月32.6万円 月42.3万円

退職金を含めて考えれば、資産3000万円というのはそれほど現実離れした数字ではありません。資産を形成できた人は、もともと節約や無駄な支出が少ない堅実な人が多いように思います。

公的年金はどのくらいもらえるか、3つのパターンで確認する

取り崩し額は、土台となる公的年金と合わせて考える必要があります。2025年度の制度に基づく目安は次のとおりです。

パターン 条件 月額目安
1.国民年金のみ 自営業等・単身・満額納付 約6.9万円
2.会社員+専業主婦(夫) 厚生年金モデル世帯(夫婦2人分) 約23.3万円
3.共働き夫婦 厚生年金2人分(平均受給額) 約27.4万円

この年金額に、上記の取り崩し額を上乗せして受け取るイメージです。正確な見込み額は、日本年金機構の「ねんきんネット」や毎年届く「ねんきん定期便」でご自身の記録から確認してください。NISAは必要になれば売却して現金化できる柔軟性があり、原則60歳まで引き出せないiDeCoより出口を考えやすいと感じています。投資信託の選び方はこちらで解説しています。

取り崩し額別に見る、資産残高の推移

毎月5万円・10万円・20万円・30万円を取り崩した場合の残高推移です。グラフの上限は各パネルの開始資産額の3倍に固定し、残高が0円になった時点で線を止めています。

成長率4%の場合

成長率4%における資産残高の推移グラフ

成長率7%の場合

成長率7%における資産残高の推移グラフ

成長率10%の場合

成長率10%における資産残高の推移グラフ

取り崩し額が運用収益(成長率×残高)を上回る間は残高が減り続け、下回れば増えていきます。たとえば資産3000万円・成長率7%なら、月10万円の取り崩しはほぼ横ばい〜微増ですが、月20万円以上だと着実に減っていきます。成長率が高いほど、増えるときは大きく増え、資産が持たないときの下がり方も急になる傾向も見て取れます。あくまで一定の年率で成長し続けると仮定した、説明用のモデルケースです。

貯蓄額・年金・支出から考える、ゆとりある出口戦略

出口戦略を具体的に考えるコツは、「貯蓄額」「年金の受取見込み額」「毎月の支出」の3つを並べてみることです。年金と取り崩し額の合計から毎月の支出を差し引いた残りが、旅行や趣味に回せる「ゆとり」の部分になります。どのくらいのゆとりが欲しいかを先に決めれば、そこから逆算して必要な貯蓄の目標額も見えてきます。

もう1つ確認したいのが、資産が目減りする状況に精神面で耐えられるかどうかです。成長率4%を前提にすると、取り崩し額を残高のおおむね4%程度に抑えれば資産はほとんど減りません。これがよく言われる「4%ルール」で、本記事の試算でも資産3000万円・成長率4%で月10万円(年120万円、残高の4%相当)を取り崩すケースは、35年後も2,839万円とほぼ横ばいでした。「資産を減らさない」ラインを基準にすれば、精神的な不安を抑えながら出口戦略を考えやすくなります。

ただし、資産を減らさないことだけが正解とは限りません。『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』では、健康で経験を楽しめる時期は限られているのだから、資産を計画的に使い切るつもりで人生を設計すべきだ、という考え方が紹介されています。「4%ルール」を安心の目安にしつつ、いつ、何にゆとりを使うかを自分なりに考えておくことも、出口戦略の大切な一部だと思います。

退職前後に準備しておきたいこと

退職金を受け取っても、急いで一度に投資する必要はありません。退職直後は税金や社会保険料、住まいや家族の支出などお金の流れが変わりやすい時期です。まず生活費と予備資金を現金で確保し、残りをいつ使うか時間をかけて整理しましょう。

出口で困りやすいのは、値下がりしたタイミングです。相場の天井や底を当て続けることはできないので、「生活費の何年分を現金で持つか」「下落時に減らせる支出は何か」「どの資産から売るか」を事前に決めておくと、ニュースを見て衝動的に売る行動を避けやすくなります。積立中のリスクとの付き合い方も参考にしてください。また、体調不良などで家族に資産管理を頼む場面に備え、口座や取り崩し方針を紙やデジタルメモで分かる状態にしておくと、いざというときの混乱を減らせます。

FAQ

Q.退職したら投資信託はすぐ全部売るべきですか?

A.必ずしも全部売る必要はありません。当面の生活費と予備資金は現金で確保し、しばらく使わない資産は運用に残す方法もあります。値動きが不安で生活に影響する場合は、無理せずリスクを下げましょう。

Q.毎月取り崩す方法と年1回取り崩す方法、どちらがよいですか?

A.毎月なら家計管理がしやすく、年1回なら手続きをまとめやすくなります。年金の入金時期や毎月の不足額、金融機関のサービス内容に合わせて選ぶのが現実的です。

まとめ

出口戦略は、退職後の不足額を公的年金と運用資産の取り崩し額で見える化し、95歳前後まで資産が持つ設計を考えることです。取り崩し額は率より実額で考えるとイメージしやすく、資産1000万〜5000万円のモデルケースでも月々の目安が具体的に見えてきます。

資産が減ることへの抵抗感は、堅実に貯めてきた人ほど強くなりがちです。貯めることと同じくらい、あの世に持っていけないお金を納得して上手に使う視点を持つことも、出口戦略の大切な一部だと考えています。

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