子どもが大学生になるころ、「19歳になれば扶養控除が増える」と聞くことがあります。結論からいうと、一定の要件を満たす子どもは「特定扶養親族」に該当し、所得税の扶養控除額が通常の38万円から63万円へ増えます。差額は25万円です。
ただし、25万円がそのまま振り込まれたり、税金から25万円引かれたりするわけではありません。扶養控除は、税金を計算する前の所得から差し引く「所得控除」です。実際に減る税額は、親の所得や適用される税率などによって変わります。
さらに、判定に使うのは誕生日当日ではなく原則としてその年の12月31日時点の年齢です。子どものアルバイト収入が増えた場合には、通常の扶養控除ではなく「特定親族特別控除」を確認する必要もあります。今回は、見落としやすい境目を会社員向けに整理します。
19歳になると扶養控除額はどう変わる?
所得税は38万円から63万円へ増える
所得税の扶養控除では、一般的な控除対象扶養親族の控除額は38万円です。一方、年末時点で19歳以上23歳未満の扶養親族は「特定扶養親族」とされ、控除額が63万円になります。
- 年末時点で16歳以上19歳未満:原則38万円
- 年末時点で19歳以上23歳未満:原則63万円
- 増える所得控除額:25万円
つまり、前年まで18歳だった子どもが年末時点で19歳となり、ほかの扶養要件も満たしていれば、所得税の所得控除が25万円上乗せされます。
ここで大切なのは、「25万円の節税」ではないことです。税負担への影響は、おおまかに「増えた所得控除25万円×親に適用される所得税率」で考えます。復興特別所得税などもあるため、正確な金額は源泉徴収票や年末調整の計算結果で確認してください。
住民税の扶養控除も12万円増える
住民税では、一般の扶養控除額が33万円、特定扶養親族の扶養控除額が45万円です。そのため、控除額の差は12万円となります。
住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税されるため、所得税と同じタイミングで給与明細に変化が出るとは限りません。年末調整の直後に住民税が下がらなくても、ただちに申告ミスとはいえない点に注意しましょう。
所得税と住民税では、控除額だけでなく反映時期も異なります。「年末調整で戻った金額」だけを見るのではなく、翌年の住民税決定通知書まで確認するのが実用的です。
最初の境目は「その年の12月31日時点の年齢」
年の途中で19歳になっても月割りにはならない
扶養控除の年齢は、原則としてその年の12月31日の現況で判定します。たとえば、春に19歳になった場合でも秋に19歳になった場合でも、要件を満たせばその年分について63万円の控除対象となります。誕生日以後の月数で控除額を分ける仕組みではありません。
反対に、その年の12月31日時点でまだ18歳なら、その年は通常の控除区分で判定し、翌年分から特定扶養親族になるのが基本です。
なお、1月1日生まれなどは年齢計算上の扱いを迷いやすいため、年末調整書類に示された生年月日の範囲で確認すると確実です。「大学1年生だから対象」と学年だけで判断してはいけません。浪人、留年、早生まれなどにより、学年と税法上の年齢区分が一致しないことがあるためです。
23歳になる年も同じ方法で確認する
特定扶養親族の対象は「19歳以上23歳未満」です。年末時点で23歳になっていれば、原則として63万円の区分から外れます。
19歳になる入口だけでなく、23歳になる出口でも控除額が変わる可能性があります。会社の申告システムに前年の情報が残っていても、毎年、生年月日と区分を見直しましょう。
次の境目は子どものアルバイト収入
確認するのは収入額ではなく合計所得金額
特定扶養親族として扶養控除を受けるには、子どもと生計を一にしていることや、子どもの合計所得金額が対象年分の要件内であることなどが必要です。
「収入」と「所得」は同じではありません。アルバイトの給与収入しかない場合、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得になります。給与以外に業務委託、動画配信、投資などの所得があれば、それらも含めて確認が必要です。
税制改正により所得要件や給与収入に置き換えた目安が変わることがあります。たとえば令和8年分の所得税では、扶養親族の合計所得金額要件は原則62万円以下とされ、給与収入だけなら136万円以下が一つの目安です。ただし、適用年分や所得の種類によって判定が変わるため、過去に覚えた金額をそのまま使わないでください。
税金上の扶養と、社会保険上の扶養も別制度です。税金の控除が使えても、健康保険の扶養要件を満たすとは限りません。扶養の壁とは?103万円・106万円・130万円で何が変わるのか
収入が基準を超えても控除がすぐゼロとは限らない
19歳以上23歳未満の親族については、通常の扶養控除の所得要件を超えた場合でも、「特定親族特別控除」を受けられることがあります。
令和8年分の所得税では、子どもの合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合が対象範囲です。給与収入だけなら、おおむね136万円超197万円以下が目安となります。合計所得金額が一定範囲内なら最大63万円の控除を維持でき、その後は子どもの所得が増えるにつれて控除額が段階的に小さくなります。
したがって、「基準を1円超えたら親の控除が全額なくなる」とは限りません。ただし、扶養控除と特定親族特別控除は申告欄が異なります。年末調整で特定親族特別控除を受ける場合は、勤務先へ所定の申告書を提出する必要があります。

会社員が年末調整で確認する4つの判断軸
- その年の12月31日時点で子どもが何歳か
- 生活費や学費を負担するなど「生計を一にする」関係か
- 子どもの年間収入ではなく、合計所得金額はいくらか
- 扶養控除と特定親族特別控除のどちらに該当するか
同居していなくても、仕送りによって生活費や学費を負担している学生などは「生計を一にする」と認められる可能性があります。一方、別居しているという事実だけで対象外、同居しているだけで必ず対象、という判断はできません。
子どもの収入が年末まで確定しない場合は、給与明細、雇用契約、今後のシフト予定、給与以外の所得をまとめて見積もります。複数のアルバイト先があるときは、すべてを合算してください。
夫婦の双方が同じ子どもを扶養親族として重複申告することはできません。どちらが控除を受けるかは、家族内の申告状況や所得の見込みを確認して決めます。単に「収入が高い側が必ず得」と決めつけず、住宅ローン控除などで所得税額がすでに少なくなっていないか、勤務先の家族手当の条件に影響しないかも確認するとよいでしょう。
書き間違いが疑われる場合は、源泉徴収票の「控除対象扶養親族の数」などを確認します。年末調整で税金が「追加徴収」になっていた…扶養控除の書き間違いを疑うときの確認順
控除を比較するときに見落としたくない注意点
税負担だけでなく、次の項目を分けて比べることが大切です。
- 親の所得税で受けられる所得控除額
- 翌年度の住民税に反映される所得控除額
- 子ども本人にかかる所得税・住民税
- 健康保険の被扶養者認定
- 親の勤務先が支給する家族手当
- 奨学金や授業料支援制度などの所得要件
これらは判定基準や対象期間が同じとは限りません。親の所得税だけを見てアルバイト時間を調整すると、別の制度で想定外の影響が出ることがあります。まず年間収入の見込みを把握し、税金、社会保険、勤務先制度の順に窓口を分けて確認しましょう。
本記事は執筆時点の一般的な制度・考え方を説明したものです。税制改正や個別事情によって取り扱いが変わるため、最新情報は国税庁、自治体、健康保険組合、勤務先などの公式情報でご確認ください。
よくある質問
Q1. 子どもが12月に19歳になった場合も63万円の控除を受けられますか?
原則として、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満であり、合計所得金額や生計関係などの要件も満たせば対象になります。12月生まれだから控除額が月割りで少なくなることはありません。年末調整書類に記載された対象生年月日の範囲も確認してください。
Q2. 年末調整後に子どものアルバイト収入が見込みを超えたらどうすればよいですか?
まず、確定した合計所得金額を計算し、扶養控除、特定親族特別控除、対象外のどれになるかを確認します。勤務先で年末調整をやり直せる期間なら担当部署へ連絡し、間に合わなければ確定申告などで訂正するのが基本です。放置すると、後日税金を追加で納める可能性があります。
まとめ
子どもが年末時点で19歳になり要件を満たすと、所得税の扶養控除額は38万円から63万円へ25万円増えます。住民税の控除額は33万円から45万円へ12万円増えます。
ただし、控除額の増加と実際に減る税額は同じではありません。年齢、合計所得金額、生計関係、申告書の区分を確認し、社会保険や家族手当とは別に判断しましょう。



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