フルローンで始めた不動産投資について、以前「なぜ続けられたか」を書きました。あの記事では、せどり・トレードと違って手間がかからないことが継続できている理由だとお伝えしましたが、「では、このまま持ち続けるべきか、売るべきか」は別の問題です。今回は一歩踏み込んで、自分の実際の収支の数字を使って試算してみます。
結論から言うと、今のところは「入居者が退去したタイミングで売却を検討する」というのが私の考えです。ただし、これは「不動産投資は儲からないから撤退する」という単純な話ではありません。むしろ試算してみると、待てば待つほど手取りが増える面もあることが分かりました。その計算過程と、それでも売却を検討している理由を共有します。

実際の収支で見る、本当の利回り
取得価格は諸費用込みで500万円弱(フルローン)、年間の家賃収入は60万円弱です。ここから3段階で利回りを見ていきます。
| 指標 | 計算式 | 結果 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入÷取得価格 | 10%台前半 |
| 実質利回り(NOIベース) | (家賃収入−固定資産税−管理費)÷取得価格 | 7〜8%程度 |
| キャッシュフロー利回り | (上記からさらにローン返済を差引)÷取得価格 | 1〜2%程度 |
キャッシュフローベースの手残りは、年数万円程度(月数千円程度)です。表面利回り10%台前半だけを見ると魅力的ですが、固定資産税・管理費・ローン返済という3つのフィルターを通すと、手元に残る金額はこの程度まで小さくなります。
待つほど手取りが増える、という計算
時価が変わらないと仮定して、今の時価(500万円程度)で売った場合に、経過年数によって手取りがどう大まかに変わるかを試算しました。
| 経過年数 | ローン残高の目安 | 税引後の手取り目安 |
|---|---|---|
| 現在 | 300万円程度 | 150万円台〜200万円程度 |
| 数年後 | 200万円台 | 190万円台後半〜220万円程度 |
※手取り目安は、売却価格からローン残高・仲介手数料などの諸費用・譲渡所得税を差し引いた金額です。
時価が横ばいでも、待つほど手取りは緩やかに増えていく計算です。理由は単純で、ローン残高が減っていくスピードの方が、減価償却の進行による譲渡税の増加より大きいためです。「何もしなくても手取りが増えていく」と考えると悪くない話に見えますが、これは時価が変わらない前提での話である点には注意が必要です。資産運用の出口戦略|積み立てたお金をいつ・どう取り崩すかでも触れていますが、出口のタイミングは「増える理屈」だけでなく「待つリスク」とあわせて考える必要があります。
待つことのリスクも同じ重さで見る
「待てば待つほど得」と単純には言えません。次の3つのリスクを抱え続けることになります。
- 市況(物件価格):一般的に、建物は経年とともに価値が下がっていくものです。一方で、ここ数年は建築資材や人件費の高騰を背景に、中古物件の価格が上昇する動きも見られます。今の物件価格は、この「経年による下落圧力」と「インフレによる上昇圧力」がせめぎ合った結果だと理解しています。どちらが今後も続くかは分からず、時価が下がれば待った分の効果は相殺されます。
- 空室リスク:待つ期間が長いほど、その間に入居者が退去して空室になる可能性の母数も増えます。空室が出れば、わずかな手残りが吹き飛ぶだけでなく、ローン返済・固定資産税・管理費は入居者がいなくても発生し続けます。
- 修繕リスク:建物の経年が進むほど、まとまった修繕が必要になる可能性が上がります。前回の記事でも触れた通り、一度の修繕で複数年分の利益が消えることもあります。
参考として、国土交通省が公表している全国のマンション(区分所有)価格指数の推移を掲載します。この指数は、実際に成立した取引(成約)価格をもとに算出されたもので、売り出し中の募集価格とは異なります。また、面積・築年数・最寄り駅からの距離といった物件ごとの条件の違いを補正(ヘドニック法という統計手法)した上で指数化されているため、単純な平均価格の推移ではなく、同じ条件の物件を比較した場合の価格変動に近い指標だと理解しています。2010年の平均を100として指数化されており、全国指数は2008年4月分から公表されています。
全国のマンション(区分所有)価格指数の推移
「ローン残高が減るメリット」と「市況・空室・修繕という不確実性を抱え続けるリスク」は、どちらも定量化しにくい部分がありますが、少なくとも同じ重さで比較する必要があると思います。「待てば手取りが増えていく」という点だけを見ると魅力的に感じますが、これは市況が変わらず、空室も修繕も発生しないという、かなり都合の良い前提の上に成り立った話だということは忘れないようにしています。
私の結論:入居者退去のタイミングで売却を検討
今のところ、私は「今の入居者が退去したタイミングで売却を検討する」という方針にしています。理由は、手残りが月数千円という薄さでは、「持ち続けるリスク」に対して「持ち続けるリターン」が見合っていないと感じるからです。地合いが良く時価が上がっている今のうちに現金化する方が、待ち続けて市況やリスクの読みにくさに賭けるより、納得感があります。
退去後にすぐ売りに出すより、家賃収入がついた状態(入居中)で売りに出す方が、実需層だけでなく投資家も買い手候補になり、選択肢が広がる可能性があります。この場合は管理会社にも早めに売却の意向を伝え、賃貸借契約の引き継ぎがどう進むかを確認しておく必要があります。
売却時も仲介手数料などの諸費用がかかり、500万円に満たない小規模な物件ほどその比率は重くなります。時価が上がっていても、手取りはその分目減りする前提で考えています。投資を始める前に考えたい生活防衛資金|6か月分の目安と早見表にも通じますが、「まとまった現金が入ったらどう使うか」を売却前に決めておくと、手にした後で判断を誤りにくくなると思います。
FAQ
不動産投資は待つほど得になりますか?
時価が変わらない前提であれば、ローン残高の減少分だけ手取りは増えます。ただし市況・空室・修繕のリスクを抱え続けることとの引き換えなので、「待てば得」と単純化はできません。
売るタイミングはどう決めればよいですか?
正解はありませんが、私は「入居者の退去」という自分でコントロールできないタイミングをトリガーにすることで、待ちすぎず、かといって焦って売らずに済む現実的な落としどころにしています。
まとめ
- 表面利回り10%台前半も、経費とローン返済を引くとキャッシュフロー利回りは1〜2%程度(手残り年数万円程度)まで下がる
- 時価が変わらなければ、ローン残高が減る分だけ待つほど手取りは増える
- ただし市況・空室・修繕のリスクを抱え続けることと引き換えであり、単純に「待てば得」とは言えない
- 持ち続けるリターンが薄いと感じたら、地合いが良いうちに売却して現金化するのも選択肢
本記事は執筆時点の一般的な考え方に基づく説明であり、特定の不動産会社、融資、金融商品を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行い、実際の税額計算や確定申告の内容については税務署や税理士など専門家にご確認ください。


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