つみたてNISAとiDeCoはどちらを先に満額にする?会社員が判断する3つの基準

資産形成

つみたてNISAとiDeCoの両方に興味があっても、毎月の余裕資金には限りがあります。「どちらを先に満額まで積み立てるべきか」と迷う会社員も多いでしょう。

結論からいうと、いつでも使えるお金が十分にない人はNISAを優先し、生活基盤が安定していて老後資金を確実に積み立てたい人はiDeCoを優先するのが基本です。ただし、年齢や収入の安定性によって答えは変わります。

なお、現在の制度では、一般に「つみたてNISA」と呼ばれているものに近い仕組みとして、NISAの「つみたて投資枠」があります。本記事では、分かりやすさを優先して「NISA」と表記します。

NISAとiDeCoは何が違う?

NISAとiDeCoは、どちらも投資による資産形成を税制面から後押しする制度です。しかし、お金を使える時期と税制優遇の仕組みには大きな違いがあります。

NISAは必要なときに売却しやすい

NISAでは、対象となる投資信託などを購入し、その運用から得た利益が一定の範囲で非課税になります。保有する商品は途中で売却でき、売却代金を住宅購入、教育費、転職中の生活費などに使うことも可能です。

この使いやすさがNISAの強みです。一方、掛けたお金そのものが所得控除になる制度ではありません。また、売却時の価格によっては、投資した金額を下回る可能性があります。

iDeCoは老後資金を目的とした制度

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、商品を選んで運用する私的年金制度です。掛金が所得控除の対象になるため、所得税や住民税を負担している会社員は、拠出時にも税負担の軽減が期待できます。運用中や受取時にも税制上の取り扱いがありますが、受け取り方や他の退職金によって結果は異なります。

注意したいのは、積み立てた資産を原則として一定の年齢まで引き出せない点です。急な出費が発生しても、普通預金のようには使えません。手数料がかかることや、勤務先の企業年金制度などによって拠出できる条件が異なることも確認が必要です。

iDeCoの受け取り方で税金はどう変わる?一括・年金・併用を会社員向けに比較

「満額」を目指す前に家計全体を確認しよう

NISAとiDeCoのどちらかを満額にすること自体が、資産形成の目的ではありません。優先すべきなのは、生活を守りながら長く積み立てを続けることです。

積立額を増やした結果、税金や保険料、家賃、住宅ローンの支払いが苦しくなり、投資商品を値下がり中に売ることになれば本末転倒です。「制度上いくら入れられるか」ではなく、「家計から無理なく出し続けられるか」で考えましょう。

また、iDeCoで拠出できる金額は、会社員全員が同じとは限りません。勤務先の企業年金の有無や内容を人事・総務部門に確認してから、自分にとっての満額を把握する必要があります。

どちらを先に積み立てる?3つの判断基準

基準1:緊急資金を確保できているか

最初の基準は、病気、失業、家電の故障などに備える現金があるかどうかです。緊急資金が少ない状態でiDeCoを優先すると、急な出費に対応できなくなるおそれがあります。

少なくとも当面の生活費を現金で確保できていない人は、iDeCoを満額にするより、預貯金とNISAを優先したほうが柔軟に対応できます。ただし、NISAも売却時に元本割れしている可能性があるため、緊急資金の全額を投資に回してはいけません。

  • 緊急資金が少ない:まず預貯金を増やし、投資するならNISAを優先する
  • 緊急資金が十分にある:iDeCoの税制上の利点も含めて比較する
  • 数年以内に大きな支出がある:必要額は投資と分けて現金で管理する

基準2:年齢と退職までの期間はどのくらいか

次に考えたいのが、現在の年齢と、積み立てたお金を使う時期です。若い会社員は退職までの期間が長い一方、結婚、住宅購入、子育て、転職など、老後より前に資金が必要になる場面も多くあります。そのため、使い道がまだ固まっていない時期はNISAの流動性が役立ちます。

一方、退職までの期間が見えており、住宅費や教育費にも見通しがついている人は、老後専用の資金としてiDeCoを優先しやすくなります。ただし、加入期間などによって受け取りを始められる時期が変わる場合があるため、開始前の確認が欠かせません。

年齢だけで決めるのではなく、「老後まで使わないと決められる金額はいくらか」を考えることが大切です。

基準3:収入は安定しているか

iDeCoの掛金による所得控除の効果は、その人の所得や税負担によって異なります。安定した給与収入があり、毎年一定の税負担がある会社員は、iDeCoのメリットを感じやすい傾向があります。

反対に、近いうちに転職、独立、育児休業、時短勤務などを予定している場合は、収入が下がる可能性があります。引き出せない資産への拠出を急ぐより、NISAや預貯金で余裕を残すほうが安心です。

iDeCoは掛金の変更や拠出停止が可能な場合もありますが、手続きが必要です。転職すると加入区分や勤務先の制度との関係が変わる可能性もあるため、働き方が変わる前後には確認しましょう。

転職するとiDeCoの掛金や口座はどうなる?退職前後の手続きを会社員向けに解説

会社員向けの優先順位パターン

3つの基準を踏まえると、優先順位は次のように整理できます。

  1. 生活防衛資金が不足している人は、まず預貯金を確保する
  2. 近い将来に使う可能性がある資金は、NISAを中心に考える
  3. 老後まで使わない資金があり、収入も安定している人は、iDeCoを組み合わせる
  4. さらに余裕ができたら、もう一方の積立額を段階的に増やす

たとえば、毎月の積立予算をすべて一方へ入れる必要はありません。最初はNISAを多め、iDeCoを少なめにして、緊急資金が増えた後にiDeCoの比率を上げる方法もあります。

反対に、生活資金が十分あり、老後資金を取り崩してしまうのが心配な人は、iDeCoを優先し、残った予算をNISAへ回す方法が考えられます。「どちらかを満額にしてから次へ」という順番にこだわらず、併用するのも現実的です。

NISAの年間非課税枠を使い切れなかったらどうなる?繰越の有無と翌年の考え方

決める前に確認したいチェックリスト

  • 急な出費に対応できる預貯金があるか
  • 住宅購入や教育費など、老後前に必要な資金はないか
  • 積立額を出しても毎月の家計が赤字にならないか
  • 転職や収入減の予定はないか
  • 勤務先の企業年金制度とiDeCoの加入条件を確認したか
  • 投資商品には元本割れの可能性があると理解しているか

一つでも不安がある場合は、いきなり満額を目指さず、少額から始めて家計への影響を確認しましょう。積立額は一度決めて終わりではなく、昇給、結婚、転職などの節目に見直すものです。

本記事は、執筆時点の一般的な制度・考え方を説明したものです。制度の対象者、拠出条件、税制上の取り扱いなどの最新情報は、金融庁、厚生労働省、iDeCo公式サイト、勤務先や利用する金融機関の公式情報でご確認ください。

よくある質問

Q1.NISAとiDeCoを同時に始めてもよいですか?

はい、利用条件を満たしていれば併用を検討できます。たとえば、老後専用のお金をiDeCoへ、必要時に使う可能性があるお金をNISAへ回す方法です。ただし、合計の積立額が家計を圧迫しないようにしてください。

Q2.税制優遇があるならiDeCoを最優先にすべきですか?

必ずしもそうではありません。税制上の利点があっても、原則として一定の年齢まで引き出せない点は大きな制約です。緊急資金が不足している人や収入が変動しやすい人は、預貯金やNISAを優先したほうが無理なく続けやすいでしょう。

まとめ

NISAとiDeCoの優先順位は、緊急資金、退職までの期間、収入の安定性という3つの基準で判断します。

使う可能性のあるお金は、流動性の高いNISAを中心に考えるのが基本です。

老後まで使わない資金があり、収入も安定しているなら、iDeCoの優先度が上がります。

満額にこだわらず、預貯金を確保したうえで、家計に合う金額から併用・増額していきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました