「副業の件で話があります。今日、少し時間を取れますか」――上司から突然こう言われたら、解雇されるのではないか、収入まで詳しく聞かれるのではないかと不安になるでしょう。
しかし、呼び出されたからといって、直ちに重い処分が決まるわけではありません。まず行われることが多いのは、副業の事実や内容、就業規則への違反、本業への影響などの確認です。大切なのは、慌てて言い訳や退職の話をせず、会社が何を問題にしているのかを一つずつ整理することです。
この記事では、副業が知られた後に起こり得ることと、会社員が取るべき対応を順番に解説します。なお、本記事は執筆時点における一般的な考え方を説明するものです。実際の対応は勤務先の就業規則を確認し、必要に応じて社労士・弁護士などの専門家へご相談ください。
呼び出しは「処分の通告」とは限らない
上司との面談は、事実確認や注意、届出手続きの案内、今後の働き方の相談など、さまざまな目的で行われます。最初から「もう解雇される」と決めつける必要はありません。
会社側が確認したいポイントは、主に次のようなものです。
- どのような副業を、いつから行っているか
- 会社の許可や届出が必要だったか
- 本業の勤務時間中に作業していないか
- 遅刻、欠勤、疲労など本業への影響がないか
- 会社の情報や備品を使っていないか
- 勤務先と競合する仕事ではないか
副業が伝わった経路を問い詰めるより、「会社が問題視している事実は何か」を聞くことが先です。発覚の仕組みについて確認したい場合は、副業はなぜ会社に伝わる?住民税で見える仕組みと会社員の対策も参考になります。

実際に起こり得ることを知っておこう
就業規則と届出状況を確認される
副業に関する会社のルールは一律ではありません。届出制、許可制、一定条件で禁止など、勤務先によって異なります。厚生労働省のモデル就業規則は勤務時間外の副業を認める形ですが、これはすべての会社にそのまま適用される決まりではありません。実際には、自社の就業規則や雇用契約書が確認の基準になります。
許可制なのに申請していなかった場合、副業の内容そのものより「必要な手続きをしなかったこと」が問題になる可能性があります。反対に、規則に副業の定めがないからといって、何をしても問題にならないわけではありません。秘密保持や職務専念など、別の規定に触れる場合もあります。
副業の内容と本業への影響を調べられる
会社が特に問題にしやすいのは、本業への支障、企業秘密の漏えい、競業による利益への悪影響、会社の信用を損なう行為などです。
例えば、深夜まで副業をして遅刻が続いている、会社の顧客情報を営業に使った、勤務先と同じ顧客を奪い合っているといった事情があれば、単なる届出忘れより深刻に受け止められやすくなります。一方、勤務時間外に行い、本業や会社の利益に具体的な影響がない副業であれば、その事実も説明材料になります。
注意や是正指示、懲戒を検討されることがある
会社の対応としては、口頭注意、始末書や届出の提出、副業の時間・内容の見直し、一定期間の停止などが考えられます。事情によっては、就業規則に基づいて懲戒が検討される可能性もあります。
ただし、就業規則に形式上違反しただけで、常に重い処分が有効になるとは限りません。一般に懲戒では、規則上の根拠だけでなく、違反の内容、会社への影響、本人の説明、過去の注意歴、処分の重さなどが考慮されます。「副業が知られたら即解雇」と単純に決まるものではありません。
もっとも、重大な情報漏えい、競業行為、勤務時間中の反復的な副業、虚偽説明などがあれば、状況は重くなり得ます。軽く考えず、事実に沿った対応が必要です。
呼び出された後に取るべき対応の順番
1.その場で結論を急がず、面談の目的を確認する
最初に「どの点について確認したいのでしょうか」と落ち着いて聞きます。驚いても、副業を全面否定したり、その場で退職を申し出たりするのは避けましょう。
すぐに答えられない質問には、「記録を確認して改めて回答します」と伝えて構いません。曖昧な記憶で話し、後から説明が変わるほうが不信感につながります。
2.就業規則と関連文書を確認する
面談後は、就業規則、雇用契約書、誓約書、秘密保持規程、副業の申請様式などを確認します。見るべきなのは、副業が許可制か届出制かだけではありません。
- 副業を禁止・制限できる条件
- 申請期限と必要な情報
- 秘密保持、競業避止、会社設備の利用に関する規定
- 服務規律と懲戒事由
会社から「規則違反です」と言われた場合は、該当する条文を具体的に示してもらいましょう。感情的に反論するのではなく、何に抵触すると判断されたのかを確かめるためです。
3.副業の事実を時系列で整理する
開始時期、仕事内容、契約形態、作業時間、会社との関係、利用した機器や情報、収入の状況をメモにまとめます。メール、契約書、作業記録など、説明を裏づける資料も確認しましょう。
特に、本業の勤務時間外に行っていたこと、会社の情報や設備を使っていないこと、本業に支障が出ていないことは、事実であれば明確に整理します。問題があった場合も隠さず、期間と範囲を把握することが先です。
4.嘘をつかず、必要な範囲で説明する
「正直に話す」とは、聞かれていない私生活まで無制限に開示することではありません。会社が規則の適用や労務管理に必要としている事項について、事実に沿って簡潔に回答するという意味です。
発覚しているのに「副業はしていません」と否定したり、売上や作業時間を意図的に偽ったりすると、副業そのものに加えて信頼関係の問題が生じます。届出を忘れていたなら、その事実を認め、今後必要な手続きを取る意思を伝えるほうが建設的です。
5.会社からの指示を書面で確認し、是正案を出す
届出の提出、作業時間の短縮、競合業務からの撤退、副業の一時停止などを求められたら、指示の内容、理由、期限を確認します。口頭だけの場合は、認識違いを防ぐため、自分でも日時と内容を記録しておきましょう。
継続を希望する場合は、「平日は作業しない」「会社の顧客と取引しない」「月ごとに作業時間を報告する」など、懸念を減らす案を示せます。副業を続ける価値を収入と時間の両面から見直すなら、副業を半年続けて時給900円だった|続ける・やめるを判断する5つの基準も判断材料になります。
6.処分や退職勧奨に納得できないときは外部へ相談する
重い懲戒を示された、退職届をすぐ書くよう求められた、説明の機会が与えられないといった場合は、その場で署名せず、文書を持ち帰って検討したいと伝えます。会社の指示を無視するのではなく、判断する時間を確保するためです。
就業規則、面談記録、会社から渡された文書、副業の実態が分かる資料をそろえ、労働局などの公的相談窓口や、社労士・弁護士へ相談する方法があります。すでに書類へ署名した場合も、経緯を含めて早めに相談しましょう。

副業をやめても税金の手続きは残る
会社の指示や自分の判断で副業を終了しても、それまでに得た収入や発生した経費が消えるわけではありません。所得の状況によっては、確定申告や住民税の申告が必要です。契約終了日、売上、経費、支払調書などの記録を保管しておきましょう。
税務上の確認には、副業の確定申告はいつ必要?会社員が押さえたい雑所得・経費・住民税の基本が役立ちます。会社への対応と税金の手続きは別問題として整理することが大切です。
よくある質問
Q1.上司に収入額まで伝える必要はありますか?
必ず一律に全額を伝えるとは限りません。会社が副業の許可判断、労働時間管理、社会保険などの確認に必要な情報を求めることはあります。まず就業規則や届出項目を確認し、何の目的で、どの範囲の情報が必要なのかを尋ねましょう。必要性に疑問がある場合は、回答を拒絶する前に人事担当者や専門家へ相談すると安心です。
Q2.会社から副業をすぐやめるよう言われたら、従うべきですか?
まず、指示の根拠となる規定と理由を確認してください。本業への支障や情報漏えいなど具体的な問題がある場合は、速やかな停止が必要になることもあります。一方、理由が分からないまま永久に禁止された場合は、事実関係と規則を整理して相談する余地があります。無断で続けると問題が大きくなるため、継続の可否が決まるまでは一時停止も含めて慎重に判断しましょう。
まとめ
副業が会社に知られて呼び出されても、直ちに解雇が決まったとは限りません。
まず面談の目的を確認し、就業規則、副業の実態、会社への影響を順番に整理しましょう。
嘘をつかず必要な範囲で説明し、会社からの指示や面談内容は記録に残すことが重要です。
重い処分や退職を求められて判断に迷う場合は、その場で署名せず、資料をそろえて専門家へ相談してください。



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